学会紹介

会長挨拶

家森信善(神戸大学教授)

 このたび、伝統ある日本金融学会の第16代会長を拝命いたしました。日本金融学会は、1943年に創設された、日本の経済学関係の学会の中でも最も歴史の長い学会の一つです。この歴史ある学会の運営をお預かりすることの重責を深く受け止め、学会の一層の発展に全力を尽くしてまいります。

 今日の経済社会において、金融は企業活動、家計、地域経済、国際取引、さらには政府の政策運営に至るまで、幅広い領域を支える基盤的な機能を担っています。金融取引は、資金を必要とする主体と資金を提供する主体を結びつけ、リスクを分担し、現在と将来をつなぐことによって、経済全体の活動を支えています。その意味で、金融はしばしば人体における血液循環にたとえられるように、経済社会の円滑な機能にとって不可欠な役割を果たしています。

 一方で、金融の役割や課題を理解するためには、経済理論だけでなく、制度、歴史、政策、実務を含めた幅広い視点が必要です。私自身は金融システム論を専門としてまいりましたが、日本金融学会には、金融政策、国際金融、金融史、金融制度論、金融機関論、コーポレート・ファイナンス、証券市場、地域金融など、多様な分野の研究者が集っています。この多様性こそが、日本金融学会の大きな強みです。金融に関する総合的な学会として、異なる専門分野の知見が交わり、金融の諸問題を多角的に議論できる場であることは、本学会のかけがえのない財産であると考えています。

 また、金融の研究は、狭い意味での研究者だけで完結するものではありません。金融の制度や市場は、現実の経済社会の中で機能しており、実務家や政策当局者との対話を通じてこそ、研究上の問いも深まり、政策的・実務的な含意も豊かなものになります。日本金融学会の全国大会や部会には、研究者に加えて、金融実務に携わる方々や政策当局者の方々も、研究発表者、討論者、パネリストとして参加されてきました。特別講演においても、著名な研究者に加え、日本銀行総裁や金融庁長官など、政策運営の第一線に立つ方々をお招きしてきました。日本金融学会は、日本の金融に関する産官学交流の貴重な場でもあります。

 日本金融学会は、二つの学会誌を刊行しています。『金融経済研究』は、投稿論文を中心に、書評や展望論文などを掲載する、日本語による金融経済学の重要なレフェリー誌として、長年にわたり独自の役割を果たしてきました。また、Japanese Journal of Monetary and Financial Economics は、英語論文を対象としたレフェリー制のオンラインジャーナルであり、国際的な研究発信の場として重要性を高めています。会員の皆様には、これら両学会誌を通じて、優れた研究成果を積極的に発信していただくことを期待しております。

 また、2025年度から日本金融学会賞を創設し、優れた研究業績を顕彰する取り組みを開始しました。さらに、2026年度からは若手研究者向けにLSEG若手奨励賞も設けられました。これらの表彰制度が、会員の研究意欲を高め、学会活動の一層の活性化につながるよう、公正かつ適切な運営に努めてまいります。

 私は、20年近く常任理事として日本金融学会の運営に関わってまいりました。その過程で、全国大会、部会、学会誌、国際交流、若手研究者の育成など、多くの活動が会員の皆様のご尽力によって支えられていることを実感してきました。同時に、私自身もこの学会で多くを学び、育てていただきました。今回、会長を拝命するにあたり、これまで受けてきたご恩に少しでも報いることができるよう、会員の皆様とともに、活力ある学会運営に努めてまいりたいと考えております。

 現在、金融を取り巻く環境は大きく変化しています。長く続いた低金利環境からの転換、インフレや金融政策の変化、国際金融市場の不確実性、デジタル化やフィンテックの進展、サステナブル・ファイナンスへの期待など、金融研究が取り組むべき課題は一段と広がっています。さらに、地域経済の活性化や、それを支える中小企業の事業承継・脱炭素化支援など、実体経済を金融面からいかに支えていくかというテーマも、ますます重要性を増しています。こうした変化の時代にあって、日本金融学会が、理論・実証・歴史・制度・政策・実務を架橋しながら、金融に関する知的基盤を提供し、経済社会に貢献し続ける学会でありたいと考えております。

 日本金融学会の伝統を大切にしつつ、多様な研究分野、多様な世代、多様な立場の会員が活発に交流できる場として、学会のさらなる発展に努めてまいります。今後とも、皆様のご支援とご鞭撻を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。